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ミニマリストを目指すヅカオタの修行の日々

ヅカオタがミニマリストになるべく奮闘する毎日をつづります

哀しみのコルドバ 雑感

遅ればせながら、雪組全ツ『哀しみのコルドバ』の雑感をつづります。一部辛口です。

私的あらすじ(せめて役名で言え)

花形闘牛士でありグラン・エリオという称号とともに世間の注目を浴びるちぎさま。だいもんの屋敷でだいもんの甥のひとこ(超美形の血筋!)に賜った剣などを見せていると、昔の恋人でありだいもんの愛人となった、パーティーを取り仕切る女主人サキヒさんに会ってしまい、きんぐ師匠の娘あんりちゃんと婚約をしているのにちぎさまは気持ちが揺れ動く。そんな中、ちぎさまの親友であるあやかぜさんの、大ちゃんの妻せしるさん(ビジュアル最強夫婦)との不倫が発覚し、ちぎさま・だいもん立ち合いのもと決闘を受けるあやかぜさん。結果的に勝ったが社会的地位を失ってしまう。

サキヒさんへの思いが募るちぎさま。だいもんの許しを請い、試合のためコルドバに戻ったちぎさまを追いかけるサキヒさん。あんりちゃんとの婚約破棄を決意したちぎさまは、きんぐに引退試合を申し出て、受け入れられる。そんな中、失意のあんりちゃんに思いを告げるひとこ。ああ柴田イズムの神髄かな。

サキヒさんを追いかけてきただいもんと決闘直前のちぎさま。そこに駆け付けたちぎさまとサキヒさんの母親から異母兄弟であることを知らされ、失望のどん底へ。サキヒさんには真実を告げずに試合に臨み、牛に突かれて息絶えるのだった。

 

勇ましいナンバーが魅力のコルドバ

冒頭の赤い布を振り回す美しいちぎさまのソロダン。ここはやはり長身でスタイルが良いと映えますね。ここで流れる解説?がポエムではまります。その後、イケメン闘牛士たちを従えて気分を高揚させる音楽とともに踊り狂う出演者。からのフラメンコ衣装に身を包む美女たち。だいもん。ああートップ娘はとにかく美しくて優雅でなくてはならないのに、私のこの淡い期待は常に裏切られるのだった。湖条れいかさんは可憐であった。

調子がかわって「コルドバ!その光と影」へ。このナンバーが大好きで、さあコルドバ始まるよ!というワクワク感を誘います。そんな作品を代表するナンバーですので、やはりきちんと締めて頂きたいのですが、今ひとつ。ただ、ちぎさまはビジュアル最強で役作りが大変丁寧、ハマればホントにどハマリする才能がある稀有な存在と言っていいでしょう。こんな闘牛士、スペインにだっていないのでは。

この次にだいもんのお屋敷へと舞台は移るのですが、その間にアルバロ(歌手)による現状の解説が挟まれ、ちぎさまが剣を賜ったことなどが語られます。さあ、アルバロ(歌手)となぜわざわざ書いたのかって?

私は何度だって叫びたい。その歌唱で歌手と名乗っていいのか否か。以下略。

やはり劇的なナンバーが魅力のこの演目、全体的にお歌があれな感じで残念でした。

四者の感情が渦巻く重要ナンバー「エルアモール」も、やはりだいもんが加わることで何とか体裁を保っていた感じがしました。ただ、だいもんの歌を聞いて、「力でねじ伏せる」のではなく「完全に役の物とする」感じで歌う様子に、歌いこなすのは難しいナンバーだと感じたことも事実です。最近パンチが効いた役か強い感情で歌うナンバーが多かったので、抑制的で憤怒の感情が蠢くだいもんはめずらしい。そして好み。

 

何が何でも95期

さあ次はちぎさまの婚約者あんりちゃん。うららちゃんもかわいいけど、あんりちゃんもかわいい。きれいなソプラノでただ歌う分にはいいけど、感情が乗ってくると声の芯が震えてしまうのが残念。かの花組エリザでタイトルロールを演じた某娘1さんを彷彿とさせて残念な気分になってしまいましたよ。96娘の添え物扱いにされるようでは困りますよ。しかるべき機会に恵まれ、舞台での経験をさらに積んで欲しいのであります。

そして何しろれいこがいない。れいこはどこだ。バウか。

れいこはひとこが演じていただいもんの甥がいいかな。あの姿、フェルゼンさまみたいで絶対似合うでしょう。ラ エスメラルダの旅人っぽいでしょう。

そうなんです。どうも全編通してれいこのことが忘れられなかった。89の沼の次は95の沼とでも言いたいのか。

れいこれいことうるさい私ですが、ひとこも大変光っていたことを付け加えます。貴公子然としてロメロ一族イケメン揃いの名を欲しいままにしていたし、意気消沈するあんりちゃんへそっと優しく近寄るひとこ…いいよ、私なら美しくも何ともない女にうつつを抜かすちぎさまなんでほっといてひとこの嫁になるよ。

それから大ちゃんとせしるさんの夫婦が最強だったことは言うまでもありません。あのビジュアルで腕組んで歩かれた日には、この司法長官を相手に決闘なんてしたくないって思わなかったのかな、あやかぜさん。ルパンでも思ったけど大ちゃんって以外と女性を包み込む役が上手いのですよね。優しさ全開で、それに答えるせし子の美貌。これがもう見られなくなるなんて、雪組を見る楽しみが半減したも同然です。

 

再演物は初演の香りを残す現代版としてがらっとアレンジして欲しい

初演の筋書きが色濃く反映されているためか、時代背景によるものか、感情を強く表す台詞が多くて、自分が淡白な人間だからかもしれませんが、全体的に多少のくどさがついてまわる点は気になりました。ある程度は各自の想像に任せて欲しいし、それは芝居をちゃんとすれば実現できるはず。
それからビンタ2回とか、きんぐの弟子たちが太陽に向かって吠えていたり、皆が早口でくどい説明してすぐ誰かに止められるところとか、例えばこうした昭和のドラマを見ているようなシーンがちらほら。こういう意味での「昭和的暑苦しさ」を持つスターたちがほぼ皆無な現代、違和感がありやしませんか。柴田先生が改変を許さないのか、中村先生がもっともっと現代風にアレンジすることを怠ったのか。せっかくの今時美形スター揃いなのに、もったいない使い方なのである。
最後のちぎさまが死ぬシーンでも、舞台の都合もあるのでしょうが、せり上がってくれたらもっとスッキリしたと思うのですが。ちぎさまの横にぞろぞろと人が集まり、サキヒさんは絶叫。余韻に浸れないんですけど…星逢はこの辺完璧だったよ。

それから歌が強くないのに、群舞ですら揃っていないのは残念。どこで悦に入ればいいのかまったく分からない12月の神奈川。
ちぎさまの白フリフリブラウスのデジャブ感が、最近スペイン物の演目が多いことを物語っているのでしょうか。このあとのショーでも何度か出てくるし。美しいからまったく問題ありませんけどね。

 

初演の、昭和の終わりのセピア色の、でも力強く血の通ったイメージは越せない

今回、この作品は初めてだったので1985年の星組初演にて予習。ヘアやメイクや衣装が時代を感じさせるものの、画質の良くない当時の映像からでもジェンヌたちの演技や歌や表情が、感情的で情熱的だった。何しろみな歌が大変上手に聞こえる。特にエリオ役の峰さを理さんが絶品の歌声だった。おそらく、長身ではないと推測するが、佇まいがピリッとして闘牛士の緊張感がきちんと伝わり、エバとアンフェリータとの間で揺れ動く苦悩が全体的な鬱蒼感を醸し出し、昭和の終わりのモノクロな物憂げさを全体に投げかけていた。何のこっちゃ。

セリフや説明的な口調にどうも柴田イズムを感じてしまい、ちえ様のサヨナラ公演の「このぅ」とか伝説のあのセリフを聞いた時のこそばゆさというか、くすぐったい感じがいまいち苦手ではあるが、実は想いの相手が異母兄弟だというまさかのラストに、宝塚を観る側のリテラシーがある程度求められていることも脳裏をよぎった。

こうした展開はどうもどの登場人物にも感情移入できず、ヅカオタ的欲求が昇華されないまま終わってしまうが、だからこそレビューではとびきり華やかで非現実的であってほしい。

全国ツアーは地方都市にも巡業するため、宝塚ビギナーに観劇の機会が訪れる劇団的にも劇場的にも良い取り組みと思われるが、このシリアスな演目は果たしてビギナー向けなのかは疑問が残る。リピーターの再演ものの楽しみはどんな演目でもどの役をどのスターが演じるのかを妄想し、劇場で(色々な意味で)撃沈することに尽きるはず(何か違う)だが、ビギナーにはもう少し楽観的で明快なストーリーでもいいのはなかろうか。

ただ、初演と全ツの比較という意味では、初演はトップ娘W体制による人間模様が色濃く反映された演出ということも踏まえると、昭和ならではの前向きな気だるさが全体を漂いながら、エリオの力強さともろさもきちんと伝わってきたと感じた。演じる役に血が通っているというか、それぞれ違和感なく(冷静にみたら大アリなんだけど)演じるというのは結構難しいと思う。スターそれぞれの人間性が垣間見えてしまい、取り繕っても剥がれてしまうためである。勇ましく躍動感のあるナンバーが勢いよく歌い継がれていて、高揚感でいっぱいの映像。歌に価値を置いて公演を見ている私には大変重要な点で、劇場で見たかった公演のひとつになりそう。一方、歌唱も滑舌も威圧感も今一歩な全ツ現代チームは、ビジュアルの良さでダンスや佇まい、闘牛シーンを華やかにし、多少の演出の変化で全体的に洗練されたイメージを持った。役作りについては、本公演に比べて若手の場面が目立つため役のふりをしている感が拭えないものの、贔屓目全開でだいもんの沈着なロメロによって締められていたように思う。ぜひともだいもんだけの「エルアモール」を聞きたい。定価(何の)の5倍したっていいから買いたい。結論から言えば、何でも初演のイメージを越えることはできず、私も初演が持つ力強さに軍配を上げたいが、時代も違えば観客の世代も変わる。別の作品と思えば何でも楽しめる。